「Phonics神話」にそっと一石を投ず。
Englishbuds 管理人 MommyKayo です。
最近、おうち英語の世界では、Jolly Phonicsをはじめとするフォニックス学習への注目が高まっていると感じています。
EnglishbudsでもJolly Phonicsのクラスを提供していますし、私自身もその効果を実感しています。
しかし、私は一つの懸念を抱いているのですよね。。。
それは、フォニックス学習の低年齢化が進みすぎていないか、ということです。
◆ フォニックスは「魔法の鍵」じゃない
フォニックスとは、英語の音と文字の関係性を学ぶ音声学習法です。
確かに、これを学ぶことで CVC(cat, hat などのシンプルな単語) は読めるようになります。
でも、そこでスラスラ本が読めるかというと、まったく別の話。
CVCが読めた!→ 絵本も読める!
そんな流れを期待してしまうのは、ちょっと無理があると感じています。
正直、CVCの先は、果てしなく長いのです。
なぜなら、英語は母音の世界が深すぎるから。
正直に言って、CVCの先には果てしなく長い“例外の樹海の森”が待っています。
たとえば、
- find / mind:magic e も silent e もないのに母音が長音に。
- love / move:同じ “-ove” の綴りなのに音が全然違う。
- busy:u はどこいった? /ˈbɪzi/ ってどういうこと?
- listen:e は書いてあるのに、音としては消えている。
- pencil:綴りは「pen-sil」なのに、発音は /ˈpɛnsəl/。語尾の “i” は弱くなり、曖昧母音(シュワー)に変化している。
つまり、フォニックスの基本ルールを知っていても太刀打ちできない単語が、山ほどあるということなんです。
英語を本当に読めるようになるには、
「ルール」だけでなく、「例外に触れてきた経験」と「意味ごとの記憶」が必要です。
つまり、フォニックスのルールは入口にすぎず、“読む力”を支えるには、その後ろに圧倒的な経験値が必要だということ。。。
Phonicsだけで読めるようになるなんて単語レベルでも無理ゲーな話だと思いませんか?
◆ 子どもの「読み readiness」は、フォニックス以前にある
子どもたちが英語の本を読めるようになるには、まず何よりも、豊かなインプットの経験値が必要です。
それは、
- 絵本をたっぷり読んでもらった経験
- 英語のリズムやイントネーションに自然と親しんでいること
- 単語ではなく、文として英語を感じてきた時間
そして、もっと根本的なことを言えば、人間としての成長段階。
耳・口・目・脳、それぞれが発達して初めて、「読む」ことができるのです。
たとえば、英語の「th」音(thinkやthisなど)は、発音が難しい音の一つです。
研究によれば、無声音の「th」(thinkなど)は約90%の子どもが7歳までに、
有声音の「th」(thisなど)は5歳頃に習得するとされています。
つまり、発音器官の発達には時間がかかるため、早期にフォニックスを導入しても、
子どもがその音を正確に発音・認識できない可能性があります。
◆ フォニックスの低年齢化に、少しだけ立ち止まってみてほしい
最近では、未就学児を対象にしたフォニックス教材やレッスンが多く見られるようになりました。
でも、私は思うのです。
そのタイミング、本当に「今」なんでしょうかね?
金ドブになってませんか?とw
- 子ども自身のことばの器がまだ育っていない段階で
- 英語の意味や文脈の理解があいまいなまま
- 音の経験が十分でないまま
そんなときにルールだけ先に入れても、読みは広がりません。
むしろ、“読めない…”という失望感を与えてしまうことすらあるのです。
EnglishbudsのPhonicsレッスン募集では、特に私のクラスでは、推奨受講年齢:小学校1年生後半としています。
理由は、書く方で真価を発揮すると信じているからです。
◆ フォニックスは「読む」より「書く」で真価を発揮する
私の実感として、フォニックスは読むための魔法というより、書くための筋トレに近いものだと考えています。
たとえば、「thank」を「sank」と書いてしまったり、「hat」を「hut」と書いてしまう子。
これは、耳から覚えた英語の音と文字がまだ一致していないだけ。
ここでフォニックスが登場することで、「この音はこの文字で表すんだ」という気づきが生まれ、書ける力・整える力へとつながっていくのです。
◆ Sight wordとの関係──「自動化されたPhonics」の世界
英語を読む力の本質は、いかに多くの単語を**“sight word”**として脳に保存していけるかにかかっています。
sight wordとは、読んだ瞬間に意味と音がスッと出てくる単語。
言ってみれば、「無意識にフォニックスを活用できている状態」です。
この状態にたどり着くためには、やはり経験がものを言います。
「sight wordが増える=読むことに慣れていくこと」なのです。
◆ 「フォニックス神話」から自由になろう
フォニックスは、大切です。
けれど、それを万能の読み道具として子どもに与えるのは、ちょっと違う気がしています。
- 本が読めるようになるには、時間がかかる
- フォニックスはその中の一部
- 読めるようになる準備が整うのは、人によって違う
このことを忘れずにいたいと思います。
◆ 最後に──焦らなくていい、比べなくていい
私たち大人も、ルールやスキルを先に学んで「できるようになる」こともあれば、まずはたっぷりの経験を積んでから「理解が追いつく」こともありますよね。
子どもたちにとっての英語も、同じです。
Phonicsは、読む力の“芯”を通す道具。
けれど、その芯がまだ芽吹いていないときには、焦らず、土を耕し、水を与える時期が必要なんだと思うのです。
✨まとめ
- Phonicsはあくまで道具。読む力の“出発点”ではない
- インプットと発達があって初めて、読みは立ち上がる
- フォニックス神話に流されず、子どもに合った順序を大切に
焦らず、信じて、今この時期の土台作りを。
それが、やがて豊かな読む力につながっていくと信じています。
このブログ記事が、フォニックス学習の導入時期や方法について再考するきっかけとなれば幸いです。
お子さま一人ひとりの成長に寄り添った英語学習を、これからもEnglishbudsでは提供していきたいと思います✨
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